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zoom RSS 2003年東大前期・世界史第1問「技術と歴史の深い関係」

<<   作成日時 : 2006/09/07 01:01   >>

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私たちは、情報革命の時代に生きており、世界の一体化は、ますます急速に進行している。人や物がひんぱんに行き交うだけでなく、情報はほとんど瞬時に全世界へ伝えられる。この背後には、運輸・通信技術の飛躍的な進歩があると言えよう。
 歴史を振り返ると、運輸・通信手段の新展開が、大きな役割を果たした例は少なくない。特に、一九世紀半ばから二〇世紀初頭にかけて、有線・無線の電信、電話、写真機、映画などの実用化がもたらされ、視聴覚メディアの革命も起こった。またこれらの技術革新は、欧米諸国がアジア・アフリカに侵略の手を伸ばしていく背景としても注目される。例えば、ロイター通信社は、世界の情報をイギリスに集め、大英帝国の海外発展を支えることになった。一方で、世界中で共有される情報や、交通手段の発展によって加速された人の移動は、各地の民族意識を刺激する要因ともなった。
 運輸・通信手段の発展が、アジア・アフリカの植民地化を促し、各地の民族意識を高めたことについて、下記の九つの語句を必ず一回は用いながら、解答欄(イ)を用いて一七行以内で論述しなさい。

  スエズ運河      汽船          バグダード鉄道
  モールス信号     マルコーニ      義和団
  日露戦争        イラン立憲革命   ガンディー


【解き方】
歴史を見ると、技術革新が大きな役割を果たすことは多い。とくに、一九世紀半ばから二〇世紀初頭にかけての交通・通信技術の革新は、欧米諸国のアジア・アフリカ侵略に利用されただけではなく、民族意識を高めることにもなった。このことについて論述しく問題だ。
使用するキーワードは、「スエズ運河」「汽船」「バグダード鉄道」「モールス信号」「マルコーニ」「義和団」「日露戦争」「イラン立憲革命」「ガンディー」だ。この問題は、歴史順に追うとともに、それぞれの技術がどのような影響を与えたのか分類する必要がある。
交通技術と通信技術という枠で分類してみると、交通技術には「スエズ運河」「汽船」「バグダード」「義和団事件」、通信技術には「モールス信号」「マルコーニ」「日露戦争」「イラン革命」「ガンティー」というように、キーワードを分類することができた。
まず交通技術の革新と世界史への影響をまとめてみよう。
一九世紀初めにフルトンが「汽船」を、スティーブンソンが蒸気機関車を発明したことで、従来と比較にならないほどの大量の物資を、しかも速やかに運搬できるようになっただけではなく、輪送費も大幅に低下した。さらにスエズ運河の開通によってヨーロッパとアジアの連絡路が短縮されたため、ヨーロッパの工業製品とアジア・アフリカの原材料の交易が大量に速やかに低コストでおこなわれ、工業化する欧米と原材料・食糧供給地であるアジア・アフリカというように国際分業が展開された。
 また、一八六九年レセップスにより開通した「スエズ運河」は、イギリスとインドの距離を半分に短縮した。イギリスは七五年その株式を買収し、八二年アラービー・パシャの反乱を鎮圧してエジプトを植民地化し、3C政策を展開した。これに対抗してドイツはバグダード鉄道敷設権を獲得、バルカン・中東に3B政策を展開した。
 つぎに、鉄道だ。ここで「バグダード鉄道」「義和団事件」を使用する。
欧米列強はアジア・アフリカの各地で鉄道を建設した。この鉄道は内陸部で産出される天然資源の運搬や本国工業製品の内陸部への売り込みに用いられた。ドイツがバグダード鉄道の敷設権を得たのは西アジアの石油利権の獲得が主目的であったし、中国でも列強がロシアの東清鉄道を始めとする諸鉄道を建設し、市場参入をめぐって競い合った。
こうした列強の進出に対し、中国では排外意識を強めた。とくに一九世紀末には義和団が鉄道・電信の破壊を伴う激しい排外活動を起こしている。ドイツの膠州湾租借を機に欧米による運輸手段で失業した中国人は扶清滅洋を唱えて義和団に投じ、北京を占領、列強の鉄道など欧米列強が建設した施設を破壊した。
ここで「ガンディー」を使用することもできる。
汽船は大量輸送を可能にし、労働力の輸送を可能にしただけではない。アジア・アフリカからの留学を容易にしたのだ。これが民族運動にもつながっていく。イギリスに留学したガンディー、ハワイや東京で民族運動を展開した孫文もそうだ。
つぎに、通信技術の発達だ。「モールス信号」「マルコーニ」を使用する。
通信技術の発達は、アジア・アフリカの民族運動にも影響を及ぼした。有線電話に始まるモールス信号は、世紀末マルコー二の無線電信にも応用され、アジア・アフリカにも世界のニュースは伝えられたのだ。
つぎに「日露戦争」「イラン立憲革命」「ガンディー」を使用して、通信技術が民族運動に与えた影響を記述する。
一九〇四〜〇五年日露戦争での日本の勝利の報は、インド人の民族意識に刺激を与え、インド国民会議は〇六年カルカッタ大会のスワデーシ、スワラージなど四綱領で英のベンガル分割令に対抗した。さらに、ガンディーの非暴力・不服従運動を成功させたのも、イギリスの暴力に対抗して非暴力で抵抗するガンディーの運動が、全世界に伝えられてイギリス批判が相次いだからである。
またイランのカージャール朝でも日本勝利の報は刺激となり、これでイラン立憲革命が起こった。このように通信技術の発達は、アジアの民族運動にも大きな影響を与えたことがわかる。
日露戦争による日本の勝利の報は、アジアの民族運動に勇気を与えただけではなく、日本が成功した立憲政体の優位性を認識させ、アジア各地での立憲運動を誘発させた。イラン立憲革命は英・露の干渉で挫折したが、青年トルコ革命はスルタン専制の打倒に成功している。
あとは、これを指定字数内にまとめればいい。

【解答例】
汽船が発明されたことで、物資の大量運送が可能になり、さらにスエズ運河の開通でヨーロッパとアジアの連絡路が短縮され、ヨーロッパの工業製品とアジア・アフリカの原材料の交易が容易になったことで、国際的分業・帝国主義政策が展開された。また鉄道は海港と内陸部をつなぐ輸送手段であり、やはり植民地支配に利用され、列強諸国は鉄道敷設を競った。ドイツは、イギリスに対抗してバグダード鉄道の敷設権を獲得して3B政策を展開し、中国の義和団は排外活動の一環として鉄道・電信を破壊した。しかし交通の発達はアジア・アフリカからの留学を容易にし、これが民族運動につながった。イギリスに留学したガンディー、ハワイや東京で民族運動を展開した孫文もそうだ。さらに通信技術が発達すると、アジア・アフリカの民族運動にも影響を及ぼした。有線電話に始まるモールス信号は、マルコー二の無線電信にも応用され、世界中にニュースが伝えられることになった。そのため日露戦争での日本の勝利の報は、イラン立憲革命やインド独立運動など各地の民族運動の刺激になり、またガンディーの非暴力・不服従運動は全世界に伝えられて民族運動を成功させた。

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