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zoom RSS 1999年東大前期・日本史第3問「江戸期の家督相続」

<<   作成日時 : 2006/07/14 21:14   >>

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次の(1)〜(5)の文章は、江戸時代の有力な商人たちが書いた、いくつかの「家訓」(子孫への教訓書)から抜粋し、現代語に訳したものである。これらを読んで、下記の設問に答えよ。
(1)家の財産は、ご先祖よりの預かりものと心得て、万端わがままにせず、子孫へ首尾よく相続するように、朝暮心掛けること。
(2)天子や大名において、次男以下の弟たちはみな、家を継ぐ長男の家来となる。下々の我々においても、次男以下の者は、長男の家来同様の立場にあるべきものだ。
(3)長男については、幼少のころから学問をさせること。ただし、長男の成長が思わしくないときは、これに相続させず、分家などの間で相談し、人品を見て適当な相続者を決めるように。
(4)血脈の子孫でも、家を滅亡させかねない者へは家の財産を与えてはならない。このような場合には、他人でも役に立ちそうな者を見立て、養子相続させること。
(5)女子は他家へ嫁がされるものだ。親の家に暮らす子供のうちから気ままに育てられると、嫁ぎ先の家で辛抱することができなくなり、これがついには離縁されるもととなる。親元で厳しくされれば、他家にいるほうがかえって楽に思えるようになるものだ。

設問
江戸時代の有力な商人の家における相続は、武士の家とくらべてどのような特徴をもったか。上の文章に見られる長男の地位にふれながら、五行以内で述べよ。

【解き方】
 江戸時代の有力な商家の相続は、武家とくらべてどのような特徴をもっていたのだろう。江戸時代は天下泰平だった。そんな安定期では、いつもと同じことをしていれば間違いがない。つつがなく無事であれば御家は安泰だ。家臣たちも失業しない。とんでもないことを始める名君よりも、何もしない殿様の方がいい。いちばん恐いのは御家断絶で、なかでも一番多かったのが跡継ぎがいないことで御家が断絶してしまう〈無嗣断絶〉だったから、大名家では、自己主張しないで子づくりに励む殿様が一番ありがたい。家臣にとっては、名君よりもバカ殿が好ましかったのだ。やりすぎる名君が出てくると、家臣たちが主君を座敷牢に押し込めてしまう〈主君押込〉があるほどだ。
 実際に改革をやりすぎたために押し込められた殿様には、久留米藩主有馬則維や岡崎藩主水野忠辰らがいた。きっと他にもいるだろう。このように殿様に才覚は必要ないから、最初から長男を家督に決めてしまう。そうすれば御家騒動もおこらない。
ただし、商家ではそうはいかない。当主に才覚がなければ家は存続しないからだ。ここが武家と商家の違いだ。
 資料によれば、(1)家の財産は先祖からの預かりものであり、自分の代で勝手に処分することは厳しく禁じられた。子孫へ伝えることが義務づけられていたのだ。これは、個人よりも家の存続が大事にされていた武家と同じだ。(2)天皇家や武家と同様、商家でも長男が継ぎ、弟たちは家来となるべきだとされている。これは、武家と同じように相続争いを恐れてのことだろう。まず家の安泰が目指された。
 ところが武家とは異なる点もある。(3)長男には幼少のころから学問をつけさせることが大切だと考えていたが、もし長男が不適格者であれば、分家が相談して相続者を決めろと述べている。さらに、(4)血を受け継いだ子孫でも、家を滅亡させるような者には財産を与えずに、他人でも役に立ちそうな者を見立てて養子にしろと述べている。長男に才覚がなければ、分家どころか、血がつながっていなくてもいいというのだ。一方、(5)女子は他家へ嫁ぐものだから、嫁ぎ先がかえって楽に思えるように厳しく育てるよう述べられている。才覚を重視するものの、女性は家督からはずされていたのだ。女性が家督からハズされていたことは、武家と同じだ。江戸時代には庶民にまで、男尊女卑という儒教が浸透していたのだ。
 設問では、商家と武家の違いが求められているのだから、資料(3)(4)をもとに書けばいい。武家は御家騒動を避けるため、長男が継ぐことこそが安泰をもたらすが、商家の場合は家の存続が経営状態に左右されるため、長男による相続を理想としながらも才覚を重視したと述べればいい。長男による家督相続を理想としたのは、後継者教育の必要があったからだろうことも、資料(3)から理解できる。

【解答例】
商家でも長男による単独相続が原則であったが、武家では御家騒動を避けるために長男による相続を厳守したのに対して、商家では家の存続が経営状態に左右されるため、相続者に資質が求められ、次男以下や他家からの養子が相続することもあった。ただし女子には相続権は認められていなかった。

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