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zoom RSS 吉川元春と六角義堯

<<   作成日時 : 2006/02/14 22:17   >>

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 『大日本古文書』吉川家文書では、一連の義堯書状を畠山義堯書状とする。しかし義堯花押が近江国内の木村文書・黒川文書に収められている六角義堯書状の花押と一致し、また『大日本古文書』小早川文書所収の『礼銭遣方注文写』に「六角殿」が見えるとともに、同じく小早川文書所収の六角義堯書状案で義堯の署名の下に当時の注記で「六角殿これ也」と記されていることから、六角義堯書状と分かる。そのため『大日本古文書』も小早川家文書や山内首藤家文書では、義堯書状を六角義堯書状としている。また『吉川文書花押藪』(東京大学史料編纂所謄写本)では義堯を正しく「近江佐々木」と注記している。
 まず年頭の祝儀に対する礼状が二通(30)、歳暮に対する礼状が一通(31)ある。

  一札令披見候、当春之為嘉慶、太刀一腰、馬一疋給之候、
  尤喜悦候、先度自是祝儀申趣、委細彼者共可申候、
  恐々謹言、
     二月三日   義堯(花押)
      吉川駿河守殿

  為当春之祝儀、太刀一腰、馬一疋給之候、尤快然候、
  猶期後喜候、恐々謹言、
     二月八日    義堯(花押)
       吉川駿河守殿
            進之候

  一札披見候、為歳暮之儀、太刀一腰、馬一疋給之儀、
  尤喜悦之至候、尚重而可申候、恐々謹言、
     十二月廿二日  義堯(花押)
       吉川駿河守殿

 二月三日付義堯礼状で「先度これより祝儀を申す趣」とあるように、これに先立って六角義堯と吉川氏の間で連絡のやり取りがあり、今後年頭・歳暮に祝儀することを吉川氏側が申し入れたことが分かる。
 これら三通の義堯礼状の花押は、上杉氏との交渉で河田豊前守に宛てた書状と同様、書止めが跳ねる型である。義堯が書止めの跳ねない花押を使用していたのは、天正三年(一五七五)四月から同六年(一五七八)正月までであり、これら義堯礼状はそれ以前か以後のものである。二月三日付義堯書状の「これより祝儀を申す趣」という文言から、六角氏と吉川氏の交渉の初期段階のものと考えられる。
 さらに二月八日付義堯書状では宛所「吉川駿河守殿」に脇付「進之候」が付けられており、他の義堯書状に比べて厚礼である。上杉氏との交渉初期に発給された河田長親宛の義堯書状と同様である。これがもっとも初期のものである可能性がある。これら三通の義堯礼状は交渉初期のもので、天正三年(一五七五)四月以前のものと考えられる。
 このように早い時期から義堯と吉川氏と交流があったことが、足利義昭の備後下向を可能にしたと考えられる。
 一連の義堯礼状と同じ二月三日付と八日付の真木島昭光(玄蕃頭)奉書が、吉川文書に所収されている。年頭の祝儀に対する礼状として二月三日付昭光奉書二通(32)および二月八日付昭光奉書五通(33)があり、また歳暮に対する礼状として十二月二十二日付け昭光奉書二通(34)がある。永禄・元亀年間に足利義昭の奉書を発給したのは、主に一色藤長(式部少輔)や上野信恵(信秀、佐渡守)であり、真木島昭光が足利義昭の奉書を発給するようになるのは元亀年間からである。とくに義昭が京都から追放された天正元年(一五七三)からは、真木島昭光が主に奉書を発給した(35)。
 このうち二月三日付昭光奉書によれば、吉川氏の使者は吉川経家(式部少輔)である。経家は天正九年(一五八一)鳥取城守将となり、羽柴秀吉に兵糧攻めされて城兵の助命と引き替えに自決した人物である。このことからも、二月三日付昭光奉書は天正年間初期のものと考えられる。
 しかし義堯礼状では足利義昭に関する文言がまったくないため、偶然同日付であった可能性も否定できない。そのため、義堯礼状と昭光奉書が関連があるかどうかは今後の課題となろう。

【注】
(30)二月三日付吉川元春宛畠山義堯書状(『大日本古文書』吉川家文書六二五号)、および二月八日付吉川元春宛畠山義堯書状(『大日本古文書』吉川家文書六二六号)。
(31)十二月二十二日付吉川元春宛畠山義堯書状(『大日本古文書』吉川家文書六三一号)。
(32)『大日本古文書』吉川家文書五三五号、五三六号・真木島昭光奉書。
(33)同五三七号、五三八号、五三九号、五四〇号(春日局への祝儀に対する返礼)、五四一号(松雲院殿への祝儀に対する返礼)。
(34)同五四六号、五四七号。
(35)同四八六号・(天正元年)十月二日付け真木島昭光奉書ほか。

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